恵比寿に居ながらフランスリヨンにいるかのような老舗ビストロ「Le Lion」誕生秘話

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みんな元気にしてました?

恵比寿新聞も元気にしていました。

ゴールデンウィークどうでした?

え?海外旅行行ったんですか?

え?俺ですか?

ずっと恵比寿にいましたよ…

さて、本日取材するお店は

「なんで今まで行かなかったの?」や

「あそこを差し置いて恵比寿の夜を語るか!?」

ぐらい読者から「はよいけ」と言われていた

恵比寿の名店「Le Lion」に行くことになりました。

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もう恵比寿の夜を知ってらっしゃる方は

このお店がどんなお店かよーくご存じ

ではあると思うのですが

そういえば結構通っているけど

お店の人のお話をしっかりと聞いたことが

ないなーと思いつつ、いつも楽しく舌鼓を

打たせていただいていた。いつも行くと

日本離れしたフランスの田舎にいるような

不思議な雰囲気としかも

スタッフもお客さんもユニークな

恵比寿1丁目にあるリヨンさん。

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平日はいつも賑わっていて

ゆっくり話を聞く機会もなかったので

なぜリヨンはこんなに素敵なのか!?

この取材でいろいろと聞いちゃおう!

ということで今回はお忙しい中

オーナーの須田さんにお時間もらって

お話を伺うことにしました。

今回は須田さん中心に恵比寿新聞恒例の

「お店をOPENするまで」を聞いてみることに。

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ちょっとLEON入ってる・・・

恵比寿新聞
今日はお忙しい中ありがとうございます。いや~レオンの取材できるなんて光栄ですよ。

須田さん
恵比寿新聞さん。リヨンですよ。

恵比寿新聞
あ”----失礼しました、、、ついうっかりてっきりリヨンとレオンを刺し違えてしまいました。

須田さん
どうやったらそうなるんですか(笑)

恵比寿新聞
説明するとジローラモがキッチンジローとの関係を疑われるように話すると長くなりますので。そういえば恵比寿新聞、結構ちょくちょくお邪魔しますがゆっくりとお話を聞いたことがなかったので今日は須田さんの生まれた時から今までの話をゆっくりと聞かせていただこうかと思いまして。須田さんのお名前の由来を・・・

須田さん
そんな「須田」の姓の由来なんか知るわけないじゃないですか(笑)

恵比寿新聞
では生まれは?

須田さん
福島市です。本当に聞くんですか?

恵比寿新聞
はい(^^)

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実家が和食屋だった

恵比寿新聞
福島県福島市出身なんですね。ご実家はどんなご商売を?

須田さん
あぁ・・・本当に聞くんですね・・・実は私の実家は和食店を営んでいまして。今は父が亡くなってからお店は閉めているのですが。

恵比寿新聞
やはりお父様の影響でお店を?

須田さん
いや。そういうわけじゃないんですけどね。

恵比寿新聞
そこで「そうですね。父の影響で」とか言うと深みが出てよかったのに。

須田さん
じゃあそうしておきますか。

恵比寿新聞
で。福島からすぐに東京に上京されたんですか?

須田さん
いや。実は22歳で東京に出てきたんですよ。それまでは鳥取の大学に行ってたんですが卒業後いとこが海外に行くので東京で住んでいるアパートが空くからということでそこに転がり込んだのが東京に出てくるきっかけなんですね。

恵比寿新聞
じゃあ「お店やるぞー!」ってモチベーションで東京に来たというわけではなく?

須田さん
はい。何も考えていませんでした。あ。しいて言うのであれば「海外で働きたいな」という思いはありました。しかし上京してカフェドフルールというお店で働いていて1年でクビになってですね。

恵比寿新聞
なんでですか?しかもそんなサラッと言わなくても。

須田さん
いや~昔はやんちゃだったんで。。その時上にいた上司を(笑)まぁクビになってその後オーバカナルで働いて。その後海外に行きたかったんでイタリアとフランスに行ったんですよ。

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イタリア・フランスへ放浪

恵比寿新聞
おぉー。何年ぐらい行ったんですか?

須田さん
半年ですね。実は「海外で働きたい」って思いで行ったんですが、全然だめで(笑)まったく自分がイメージしていた感じではなく。まぁ挫折ですかね。半年で帰ってきたんです。

恵比寿新聞
言葉の壁とか?

須田さん
まぁそれもあったんですが、なんて言ったらいいんだろうな~。とにかく合わなかった(笑)

恵比寿新聞
その時期が大体23歳~24歳ぐらいってことですね。

須田さん
そうですね。でもかなりいろんな影響を受けましたね。恵比寿新聞さん大丈夫ですか?こんな話記事にならないでしょ?・・・・

恵比寿新聞
いやいや。僕は恵比寿の皆さんの今までの生きざまを記録するのが使命なので。で日本に帰ってくるということですか?

須田さん
そうですね。海外に行く前に一緒にオーバカナルで働いていた小倉くんが表参道に「ニド・カフェ」というカフェをやることになっていて帰国後一緒にやろうと誘われたんです。

恵比寿新聞
おぉ~あの名店「ニド・カフェ」じゃないですか?

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ちいさな革命

須田さん
そのニド・カフェのオーナーの武田さんからは「何やってもいいよ」と言われてですね。

恵比寿新聞
なんていい社長さん。というかニド・カフェって十数年前に突如として沸き上がった空前の東京カフェスタイルの走りみたいなお店じゃないですか?

須田さん
確かにそうですね。小倉君がその仕掛け人と言ってもよいと思います。

恵比寿新聞
駒沢のロータスや表参道のニドカフェってあの時の憧れの店って感じでしたよね。

須田さん
とにかく流行っていましたね。しかしそんなカフェスタイルを新たに「ビストロ化」にしようという提案をしまして。

恵比寿新聞
なんで???そのままやっていれば順風満帆じゃないですか?

須田さん
その頃はもう同じような店があふれ返っていて、みんな同じようなスタイルの・・・・

恵比寿新聞
あぁ~。わかる。お店ではどっかの有名な曲がボサノバカバーされているような曲が流れカプチーノが出てくるみたいな。

須田さん
そうですね。もうなんだこれ?みたいな。なので当時シェフだった大杉くんが元々フレンチだったんでカフェでも本格的なビストロ料理が楽しめるお店にしようと。

恵比寿新聞
今ではまたまた主流ですが当時としてはすごい方向転換ですね。大丈夫だったんですか?

須田さん
オーナーの武田さんからは「大丈夫なの?フレンチなんかにして」と不安視されていたんです。当時はビストロ的なお店って少なかったから無理はないですよね。とにかく「本格的」な味が楽しめる店にしたかったんですよ。お店はおかげさまで繁盛しました。

恵比寿新聞
おぉ~。時代の波に消費されずに済んだわけですね。あのころカフェはブーム化してたくさんできたけどほとんど消えましたからね。で。この後どうなるんですか?

須田さん
どんどんお店も流行るようになる中で働いているスタッフも俺もなにか「自分たちの追い求めている世界」からちょっとづつ離れてきたんですね。「東京カフェスタイル」なんて言葉も出てきだしてぶっちゃけ「そんな言葉にカテゴライズされたくない」と思うようになって。オーナーの武田さんに辞めると申し出たんですね。「もう東京カフェスタイル的なことはやりたくない」と。

恵比寿新聞
だれにも止められない革命がおこったんですね。

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自分たちが求めるスタイル

須田さん
その当時ニド・カフェで働いていた小倉とシェフの大杉、そして僕が抜けて独立する運びとなり。まず開店するまで僕はシャルダンデサブールというフレンチの店でサービスの仕事の基礎から学ばせていただいてワインもそこでかなり勉強しました。

恵比寿新聞
カフェブームからの「本格志向」ののちの決断で、やっぱりお店やるならしっかりと基礎からということですね。で「Le Lion」が誕生するということなんですね。

須田さん
そうですね。もっともみんながやりたかったスタイルが今もこの形で残っているという感じですね。

恵比寿新聞
今では非常に「メインストリーム」なスタイルですが当時はここまでフランスの食の街「リヨン」の雰囲気をコンパイルしてしかもカジュアルに楽しめる雰囲気づくりって立ち上げとか大変じゃなかったんですか?

須田さん
今だから言えるのですが全然お金もないので実はお店の内装全部みんなで手作りなんですよ。主に小倉が内装デザインを担当したんですが、カウンターだって床だって全部自分たちで張ったり作ったりしたんですよ。

すべてスタッフの手で作られた内装。カウンターも手作り。

すべてスタッフの手で作られた内装。床も自分たちで張った。カウンターも手作り。

今年で10年

恵比寿新聞
自分たちが追い求めるスタイルってなんだったんですか?

須田さん
フランスのリヨンにあるビストロは「ブション」と呼ばれているんです。フラッと入れるような、気軽でスタッフもお客さんもフレンドリーで大衆的な。そんな「ブション」的なことをやりたいと思っていたんですよ。

恵比寿新聞
「ブション」ですか?

須田さん
はい。本場のリヨンでは「ブション料理」ってのもあるくらいポピュラーな存在なんです。

恵比寿新聞
そういえばル・リヨンの料理はどことなく「田舎風」な感じがしますがこれも「ブション料理」ってことですか?

須田さん
そうですね。テラスがあって気兼ねなく訪れてリーズナブルで普段使いな。お料理もリヨンの郷土料理が中心で肩ひじ張らずに楽しめるスタイルですね。

恵比寿新聞
おー。恵比寿新聞もリヨンを利用するのは「軽く飲めて」しかも「がっつり食べたいときにも便利」でしかも「肩ひじ張らない」。あとお客さんの関係性も近いですよね(笑)この間も行ったら隣の席のお姉さんから「飲みます?」ってワインのボトル傾けられましたから(笑)

須田さん
そうですね(笑)常連さん面白い人ばっかりですよ。

恵比寿新聞
でも結構そんなスタイルのお店が少ない時期にお客さんの認知とかも苦労したんじゃないですか?

須田さん
そうですね。お昼間は盛況だったんですが・・・・

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近隣の飲食店のつながり

須田さん
最初夜は全然人も来なかったんですが、フレーゴリーの村上さんや近くのバーのライズの西尾さんやパナセの羽崎さんなどに気に入ってもらっていろんな人を連れてきてもらってからですね。

恵比寿新聞
ほんと一丁目~四丁目の飲食店の皆さんは仲がいいですからね~。お店終わってからも飲みますしね。

須田さん
そうなんですよ。ほんとあれよあれよと言う間にいろんな恵比寿の皆さんが来てくださって。今でも来客する方の多くは紹介でくる方が多いですね。

恵比寿新聞
恵比寿の良いところでもありますよね。皆自分のように心配して来てくれる同業者がたくさんいるって。

須田さん
本当にありがたいですね。

恵比寿新聞
ん~須田さんのそしてリヨンの歴史がわかったところで、お料理のほうを頂きたいと思うのですが!今回はやっぱ「定番」をお願いしたいなと!

須田さん
かしこまりました。

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燻製ニシンとジャガイモのサラダ仕立て

この料理は「リヨンに行ったら必ず頼む」

リストに恵比寿新聞必ず入っております。

なんとも独特なリヨンならではの味なんです。

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中には

燻製したニシンとソテーしたジャガイモ。

マリネした玉ねぎにニンジンと葉物。

そしてバターが上に乗っております。

これを口の中に全部一緒に入れて食べると

何とも言えない燻製ニシンのスモーキーな

味わいとバターの滑らかさとソテーした

ジャガイモとニンジンとタマネギの甘みが

絶妙にマッチする一品。美味いよこれは。

それではお次に行ってみましょう!

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千代幻豚の自家製ハムとクレソンサラダ

千代幻豚(ちよげんとん)と呼ぶこちらの豚。

現在では天然記念物とも言われるほど希少な豚

「中ヨークシャー種」を復活させた第一人者である

養豚職人(故)岡本陸身さんが25年の歳月をかけ

味を追求し作り上げた幻の豚だそうです。

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頂いていましたが

まぁこの脂身が上品。ちょっと置いておくと

ハムから汗が出てきてすぐにでも

溶けてしまうほどのサラサラ脂で

口どけもよく非常に不思議なハム。

クレソンサラダを巻いて白ワインで

流し込むとたまらんですね。

んー。美味い。濃厚なものが食べたいなー。

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????

恵比寿新聞
須田さん。これはなんですか?見たことない。

須田さん
「クネル」っていう日本でいうと「はんぺん」という感じですかね。

恵比寿新聞
ということは白身魚などが練りこまれている的な?ではこのソースは?

須田さん
オマールで出汁を取ったアメリケーヌソースですね。

恵比寿新聞
ぎゃー!!これうまうまじゃないですか!!!魚介の濃厚ちゃん集合!!みたいな。

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半分にカットしたクネルちゃんの上から

しっかりとした濃厚なアメリケーヌソースを

上からたっぷりかけていただきました。。

絶句

何とも言えないクネルのパスっという歯触りに

絡みつくアメリケーヌの超濃厚な味わい。

うぁ。。うまい。。。

白ワインがぶ飲みしたい。これ。

いわゆるこれが本場リヨンの「ブション料理」

本場フランスリヨンでは川カマスを使用し

ソースはオマールではなくザリガニを

使ったりするそうです。

すごい。この味癖になりそう・・・・

さて、次に参りましょう。

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フランス産仔鳩のロースト

あぁ・・・おいしそう・・・・

フランス産の仔鳩をしっかりと

ローストした王道の味。

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バターでしっかりと外の皮をパリッと

するまでポアレしてたまらん・・・

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きれいに裁きます。

こちらシェフの宮原さん。

宮原さんはle lion9年目のベテラン。

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こんなのおいしいに決まってる・・・

香ばしい香りにソースが・・・・

あぁ・・・・早く食べたい・・・・

ちょっとワインも飲みたい・・・

と思ったら・・・・

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以心伝心

ゴクゴクゴク・・・・

あぁ・・・全部のんじゃったよ・・・・

早く食べたい・・・・

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そして貪るように

フランス生まれの仔鳩の足にかぶりつきました。

あぁ・・・・なにこれ・・・

鳩って赤身の肉を思わせるような

でも鳥なんだよね・・・・美味い・・・

そして付け合わせのキノコがやばい・・・

恵比寿新聞
須田さん。この付け合わせのキノコ・・・おいしすぎるんですけど・・・

須田さん
あぁ~それおいしいですよね^^

恵比寿新聞
・・・いや・・・名前教えてほしい・・・

須田さん
あぁ~すみません。このキノコは「ジロール」ってキノコですね。

恵比寿新聞
レオン風な名前ですね・・・・

須田さん
はい?

 

 

この「ジロール」なるキノコ。

イタリア語では「ジローラモ」と呼ばれており。

あ。嘘です。日本名は「アンズタケ」

このキノコがまぁ~香りが良いこと。

歯ごたえもあり仔鳩の香りにもマッチ。

この季節しか食べれないのかな?

 

ポーションを見ていると大体3~4人ぐらい

でワイワイとやるのが丁度よい感じ。

もちろん小分けにして出してもくれる。

んー。須田さんの話を聞いていて

また楽しみ方がわかってきたぞー。

さぁ!メインですね!

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マグレ鴨のロースト

まさに芸術的なロースト。

血がしたたり落ちる寸前での火入れ。

絶妙な火の入れ具合だと見て取れます。

ソースはオレンジソース。

さっぱりといただけるわけですね。

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やっぱり鴨と言えば「脂」が特徴。

このマグレ鴨はフォアグラの副産物として

フランスではとても人気の鴨なんです。

これがワインに合う。んーかなりカジュアルに

ワイワイと飲めるし料理は絶品。

肩ひじ張らなくても良いし。

スタッフは気さくだしお客さんも面白い人ばかり。

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やっぱり雰囲気いいんですよね~。

日本じゃない雰囲気というか。なんというか。

いい店の条件って清潔だったり明朗会計

だったりとかオペレーションがとか

よく言いますが実は

「働いている人が楽しんでる」って所が

肝のような気がするんですよね。

その点リヨンのスタッフさんは看護婦さんの

ようなホスピタリティーというか(笑)

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あと「行けばだれでも友達」みたいな

雰囲気って意図的にできるものではない

と思います。やっぱ働いているスタッフの

皆さんのバイブレーションってすごく重要。

フランチャイズでコピーな「お仕事」として

やっているようなお店にはこの「いい店」の

雰囲気を醸し出すのは難しいんだろうな。

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「Le Lion」は11:30~24:00まで続けてOPEN。

平日も込み合っていますがふらっとよれば

空いてることもしばしば。

んー。新しいことを始めるって時間がたつと

古いものになってしまうことがあるけど

本当のことを追い求めると「文化」になって

普遍的な存在になるのね~と。

いつまでも通いたい店。粋な店。

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Le Lion
東京都渋谷区恵比寿1-21-16 シェソワエビス 1F
03-3445-8131
定休日 日曜日
営業時間 11:30~24:00

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