【食歩伝】Vol.3 niruと煮物と高橋幸宏

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恵比寿新聞の編集長の日々恵比寿の色んな飲食店へお邪魔してはお料理の話に花が咲いてしまう出来事をショートコラムで紹介する「食歩伝(しょくほでん)」。今日は恵比寿と渋谷の間にある小さなお店「niru」さん。

世界観

「世界観」というものは無限の表現方法がある。お店の照明ひとつ。お料理の内容もそう。実は料理を味わっているようで本当はその場所の「世界観」を体験していることに喜びを感じているのではないかと思うような時があります。

今日心を奪われたのは恵比寿と渋谷の真ん中にある小さなお店「niru」。そこでとても素敵な「世界」を観た。座りやすい小さな椅子、食器棚に置かずカウンターに置いたかわいい和食器、どこまでも見渡せるカウンター。シャイな店主。そして音楽は乾いた電子のスネアドラムが弾ける80年代のサウンド。感じたことがあるようで、ないそんな世界観だった。

日本の80年代のサウンドは現在世界でも注目を集めている。5年前にイタリアのペルージャに住むクリエイターのニックというアーティストがfacebook越しに「maria takeuchiのplastic loveのLPを買って送ってくれ」と言われたことがあり驚いたことがある。世界の裏側では当時日本の80年代ポップスが人々を魅了してた。2010年に入ってからだ。当時ヤフーオークションでは2,000円だったと記憶するが現在はなんと世界で30000円の高値で取引されているというから驚きです。

そんな世界的なトレンドの流れを帯びてこの「niru」では選曲しているのかと思いきや、実は違う。何故ならこのお店「高橋幸宏」しかかからないのだから徹底されている。恵比寿ビール坂のご存じ「鶏敏」は松田聖子しかかからない事を多くの人もご存じだと思うのですが、こちら「niru」は「高橋幸宏」の曲しか書けない事でこの世界観を作り出している。

高橋幸宏と言えば「YMOのドラムの人」という印象が強いかと思いますが、昔サディスティックミカバンドというとんでもないバンドがあり英国でもデビューしあのブライアンフェリー率いるロキシーミュージックの世界ツアーにも同行するという実力派のバンドのメンバーでも知られる。いわば「世界の幸宏」なのである。

店主の佐保さんに「なぜ高橋幸宏オンリーなのか?」と聞いてみたら「いや、好きすぎて、ただただそうなりました」とシンプルな答えが返って来た。その言葉にとても感動したと同時にもう既にこの場所は高橋幸宏じゃないとしっくりこない感覚が自分に芽生えました。お店の世界観は店内の装飾や料理のこだわりや店主の雰囲気だけではなく「音楽」をスパイス的に調合することで見たことのない世界観を創り出す事に感動したというお話でした。

そして店主の佐保さんが作る煮物中心の料理とセレクトされたワインやお酒がとてもユニークなのでフラッと散歩がてらに寄り道してみる事をお勧めします。

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