【後編】恵比寿のROBOTが贈る新作短編アニメーション「ゴールデンタイム」

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※前回までの話のつづき※

ROBOTに潜入するも機密情報保護の観点で会議室しか見れなかった恵比寿新聞。

そして今回本題となる新作短編アニメーション「ゴールデンタイム」の試写をする為

役員会議室に通された恵比寿新聞。そこで目にしたのはあの・・あの・・アカデミー・・

アカデミー賞のオスカー像じゃないっすか!?

中上川さん
そうですね^^アカデミー賞のオスカー像です。

恵比寿新聞
これはどなたが取られたんですか?

中上川さん
ROBOTに所属するアニメーション作家の加藤久仁生が、「つみきのいえ」という作品で短編アニメーション賞をいただいたんです。

恵比寿新聞
いや~見させていただきましたよ。水に沈みゆく街に積木を積み上げたかのような家で暮らす老人のお話ですよね。あんなに哀愁の漂う作品は今までなかったってほど何故かせつなくて、ホロっと来ちゃいました。そういう事だったんですね。

中上川さん
ありがとうございます。アカデミー賞って、アメリカ映画の賞なので、アメリカで劇場公開されている映画が対象だったりするのですが・・・。

恵比寿新聞
いわゆるノミネートするまでに満たす必要のある基準があるんですね。

中上川さん
そうそう。でも「つみきのいえ」はその前年に、アヌシー国際アニメーション映画祭でアヌシー・クリスタル賞(最高賞グランプリ)をいただいて。そうするとアカデミー賞に推薦していただけるんです。そしてノミネート作品に選ばれて、あれよあれよと受賞して・・・。作ったスタッフの人もまさかこんな風になるとは!って言ってました。

恵比寿新聞
いや。本当にあの作品は年代を超えてたくさんの人が見るべきですよ。

中上川さん
今回の新作「ゴールデンタイム」も、そんな世代を超えた、ちいさい子からお爺ちゃんお婆ちゃんまで見てもらいたい作品なんです。ROBOTには4人のアニメーション作家がいて。「つみきのいえ」の加藤久仁生につづいてオリジナル作品をカタチにしたのは稲葉卓也といいます。まずはご覧いただいて、その後、稲葉卓也とプロデューサーの松本絵美も同席しますので。ゆっくりご覧くださいね。

恵比寿新聞
あっ!その前に!!

オスカー像持ってもいいっすか?

いや~持ってみて思ったのですが「重い」です(笑)

こんな貴重な機会に恵まれて生まれてきて良かったーって思える瞬間でした。

さてさて、今回の新作「ゴールデンタイム」の試写が始まりました。

時は1980年代。

最近生まれた人はわからないかもだけど当時80年代はとても活気があったと思います。

大幅な金融緩和によって日本にたくさんモノが入ってくる裏側では捨てられる昔のものも

たくさんあります。そんな捨てられたテレビと「捨てられたモノ」達のお話です。

これ以上はネタバレするから言いませんが観終わった後に「誰もが見るべきアニメ」

だと強く思いました。

そんなアニメ「ゴールデンタイム」の監督・アニメーションの稲葉卓也さんにお話を

伺ってみました。なんと稲葉さん。NHKのキャラクターでもおなじみの「ななみちゃん」

の生みの親。いわゆるいうところの「ななみちゃんのお父さん」なのであります。

恵比寿にこんな凄い人がいたんだ!!!

説教臭くしたくなかった

恵比寿新聞
素晴らしい作品でした。見終ったあと、自分と向き合えましたし1970年代生まれの私としてはとても懐かしい光景と何か寂しい思いと物を大切にする気持ちなど一気に押し寄せてコンフューズしてしまうほどでした。

稲葉さん
ありがとうございます。今回の「ゴールデンタイム」はセリフの無いアニメなんですね。なので小さいお子さんからお年寄りまで、そして言葉を超えて他の国の人たちにも見て頂きたいと思っています。

恵比寿新聞
僕が感じたのは捨てられたテレビのあの表情だったりもう不要になったモノたちの苦悩とハートウォーミングな楽しい日常なども描かれていてとても不思議でした。喜劇と悲劇がミックスされたような。

稲葉さん
あまり説教臭くしたくなかったんですね。「こうしないといけない」みたいな。今回の作品はセリフが無い分表現が絵や音楽になるわけなので自然に見てもらって感じてもらえたらと思います。特に子供たちには見たあとでお父さんやお母さんと話できるような。

温め続けた企画

恵比寿新聞
今回の「ゴールデンタイム」が作品化されるきっかけとはどういう物だったんですか?

プロデューサー松本さん
元々稲葉くんとは何かオリジナルストーリーのアニメーション企画をやろうと、時々企画会議を行っていて稲葉くんの方でいくつか温めていた企画があったんです。多分ほぼ1年くらい続いたと思うのですが、何度も会議を行う中では「ゴールデンタイム」とは別の企画もあり、良い作品になるかなと思ってはいたのですが、最終的に「本当にやりたいものはどれ?」ということを突き詰めた時、最後に本人が出して来たのが捨てられたテレビの話でした。それを社内プロジェクトとして制作したい旨を上司に相談したところOKがでて、今回の作品ができました。

恵比寿新聞
いわゆる「社内プロジェクト」というやつですね。普通の私から見ると会社というのはもちろんクライアントがいて成り立つ物だし、広告制作会社という機能であれば「クライアント様」の物を作るというのが会社のミッションのような気がしますが。社内プロジェクトというクライアントのいない世界でそこまでして自分たちの作品を作っていくって凄い会社だな~と。

松本さん
すべてがそうではありませんし、たまたまではありますが、今回は文化芸術振興費補助を受けたからより良い作品が作れたところもあるんです。もちろんクライアントが納得する物を作るのが私たちの仕事でもあるんですが、クライアントの先には一般のお客さんがいるという事を私たちは通常に意識してモノ作りをしてるところがありますね。なので社内プロジェクトでも、通常のクライアントあっての仕事でも「手に取る人・見る人へ」を意識したモノづくりが大事だと思ってます。

中上川さん
ROBOTのロゴの下には「communications inc」という、コミュニケーションをする会社という表記があって。映画もCMもアニメもどの仕事も、受け取り手を意識したものづくりを大事にしています。

恵比寿新聞
なるほど。「最終的に手に取ったり見たりする人を意識して物作りをする」ってどんなモノづくりにも共通して言える素晴らしい作り方ですね。愛が無いとできないというか。だから凄い作品が生まれてくるんですね。あ!あとちょっと気になったんですが、当初から「ゴールデンタイム」という表題だったんですか?

稲葉さん
いえ・・・最初は「さよならテレビ」って名前でした(笑)

恵比寿新聞
げ。。な・・・なんか寂しい・・・

稲葉さん
僕的には「さよならホームラン」的な一発逆転的イメージでつけたんですが。やはり「寂しい」という意見もあり。

プロデューサー松本さん
そこでみんなで考えた結果。「輝いていたあの頃」というイメージを言葉にした時に「ゴールデンタイム」という表題が出たんです。
外国では「プライムタイム」と呼ぶんですが、あえてここは「ゴールデンタイム」という和製英語のままで、英訳もいこうと思いました。

恵比寿新聞
さすがのネーミングだなと思いました。それでは制作過程についてお伺いしても良いですか?

稲葉さん
実は既に冒頭の3分ぐらいまでは仕事の隙間を利用してコツコツ作っていたんです。半年かけて。それをパイロット版としてプロデューサーに見せました。

恵比寿新聞
ひ!?ひとりで半年ですか!?

稲葉さん
残りは周りのスタッフにも手伝ってもらったのですが、最初のパイロット版は一人ですね。結構地味な作業なんですよ。アニメーションって。

キャラクターから感情が伝わる工夫

恵比寿新聞
今回の作品ではキャラクターにはセリフが無いじゃないですか?でも凄く感情が伝わってくるんですがこの点はどういう所を工夫されたんですか?

稲葉さん
今回はかなり音楽やSE(SoundEffect)にこだわりました。

松本さん
常は作品が出来上がるタイミングで曲を頂くことが多いのですが、ゴールデンタイムの場合は絵コンテの段階から何度も擦り合わせて音と映像がシンクロするように作っているんです。なので音楽の作り方としては、かなり贅沢な作業になってますね。

稲葉さん
音楽にかなり助けられている部分があると思います。今回音楽を担当していただいたのは烏田晴奈さんという方で、この方は自身でもアニメーションを描かれるんですね。非常に面白い方で「トムとジェリーにおける音楽と映像の関わり」を研究していたりと(笑)

恵比寿新聞
トムとジェリーですか?(笑)確かにトムとジェリーは絶妙な音と映像のシンクロですね。

稲葉さん
なので彼女にお願いしたという流れなんです。その他SEに関してもテレビがきしむ音などはその当時の古い家具調テレビから音を録ってるんです。

恵比寿新聞
え!?どういう事ですか?

稲葉さん
如何にリアルさを表現できるかという極限まで追求しているので実際のキャラクターから発する音などはリアルにその当時の年代の物から取っています。たとえばテレビのチャンネルを回せば「ガチャガチャッ」って音も。

松本さん
「カチャカチャ」じゃないんですよね。本当にあの重いチャンネルの「ガチャッ」って感じ(笑)

稲葉さん
ALWAYS三丁目の夕日でお世話になった美術屋さんに古いテレビをお借りして。お世話になりました(笑)

恵比寿の人たちに見てもらいたい

恵比寿新聞
どういう方に見てもらいたいですか?恵比寿新聞は恵比寿に関連のある方が見ているのでそんな読者層に何かメッセージがあれば。

稲葉さん
そうですね。小さなお子さんやお年寄りまで見てもらいたいです。そして恵比寿は未だに古く残るお店がたくさんありますしそういう方にも見てもらいたいんです。ROBOTは大きな映画なども作ってますが、その一方でこういった自社の小さなオリジナル作品も個人商店の仕事のように作っているところがとても面白い会社だと思っています。是非、地元の方にも楽しんでいただければと思います。

恵比寿新聞
あと稲葉さんが良く行く恵比寿のお店ってどこですか?(笑)

稲葉さん
中島のお惣菜屋さんです(笑)

恵比寿新聞
あそこの煮豆美味しいですよね(笑)今回はお時間いただきありがとうございました。

いや~ROBOTさんって日本のディズニーに近いんじゃないかなって思いました。

こんな会社が恵比寿にあること自体誇りに思うべきですよね。

ここで皆さんビックチャンス!

今回新作で発表された短編アニメ「ゴールデンタイム」が1月11日~26日まで恵比寿ガーデンプレイスの東京写真美術館ホールにて劇場公開されるんです!!

今回の新作「ゴールデンタイム」が(22分)本邦劇場初公開になりまして

そしてROBOTさんと共に作品を多く手掛ける「白組」さんの「タップ君」も同時上映!!

このタップ君の臨場感あふれる足さばきがなんとも高揚しちゃう素晴らしい作品だと思います。

音楽はなんと!!ソニックユースに在籍していたあの!「ジムオルーク」が担当。

ジムオルークと言えば映画「スクールオブロック」の音楽コンサルタントも務めたり

最近ではこんな番組にも出ていましたね。

なにこの世界感(笑)

そして!!

今回の取材の随所に出てきましたアカデミー賞短編アニメーション賞を受賞した

不朽の名作「つみきのいえ」も同時上映されるんですね。

豪華3作を上映!!!

是非お子様連れそしてお爺ちゃんお婆ちゃん、恵比寿にいる方は是非劇場に足を

運んでみてください。恵比寿新聞がいうのもなんですが

恵比寿でできたアニメーション

だと思います。今回の記事長かったね(笑)
みんなでみにいこう!!
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手仕事のアニメーション

2014 年 1 月 11 日(土) – 26 日(日)
東京都写真美術館ホール

数々の映像作品を常に作り続けているプロダクション
「ROBOT」と「白組」それぞれが心を込めて贈る
オリジナル短編アニメーションの最新作を劇場初公開!

上映作品:
・ゴールデンタイム(稲葉卓也監督・22 分 50 秒・2013 年作品)
・タップ君(アンマサコ監督・23 分・2013 年作品)
・つみきのいえ(加藤久仁生監督・12 分・2008 年作品)

上映時間:
・11日(土)、18日(土)
12:20/13:50/15:20/16:50/18:10/19:30
・12日(日)
12:20/13:50(イベント付上映)
16:50/18:10/19:30
・平日、13日(月・祝)26日(日)
12:20/13:50/15:20/16:50
・19日(日)
12:20/13:50(イベント付上映)/16:50

*休館日1月4日(火)・1月20日(月)

料金:
一般 1,200 円/学生・シニア・障害者手帳をお持ちの方 1,000 円/
中学生以下 600 円/※未就学児童は無料。
入場各回定員入替制/自由席
当日 12:00 より各回のチケット販売を開始いたします

監督によるトークイベント:
1月12日(日) 13:50の回上映後
稲葉卓也監督とアンマサコ監督のトークイベント開催

1月19日(日) 13:50の回上映後
稲葉卓也監督の作品集上映及びトークイベント開催

上映会に関するお問い合わせ:
東京都写真美術館 TEL:03-3280-0099

「ゴールデンタイム」作品サイト
http://www.robot.co.jp/special/goldentime/

ROBOTの企業サイト
http://www.robot.co.jp/
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