つい先日、芸術家ののぎすみこさんとお茶をしていた時のこと
「実はね恵比寿に靴の修理をする傍ら面白い事やってる仲間が居てね」という話題になり
興味津々ですぐにご紹介していただき取材する事になった。
「面白い事ってなんだろう?」
胸を膨らませ向かった先は恵比寿から少し離れたほぼ広尾にある
一軒の靴修理屋さん「Walker Repair Shop」
もうこの修理屋さん10年以上あるよな~と思いつつも
中に入ると革靴独特のにおいで意外とこの匂い好きだな~。
今回はこちらの実務をすべてに引き受ける小澤圭史さんが
一体何をやっているのか!?という感じで取材が始まりました。
実はこの「Walker Repair Shop」の先代は3年前に他界され
現在は小澤さんが切り盛りする街の靴の修理屋さん。
小澤さんが靴の修理を覚えたのは先代そして靴職人の先輩から教わり
その後は見よう見まねで靴の修理を習得したそうです。
それではまず「靴の修理」とはどういう物なのか?職場を見学。
多い靴の修理は「ハイヒール」だそうです。
かかとのヒール部分の修理を見せていただきました。
なかなかこういう修理過程を見るのって貴重ですね。
まずはすり減ったヒール部分をペンチで剥がします。
結構、力がいる作業のようで「パチンッ」と取れました。
そして新しいヒール部分を装着します。
金槌でカンカンカンときつく装着。
そしてこのマシーンの出番です。これなんだかわかります。
削るためだけにある「削りマシーン」でありまして
カッター・ヤスリ・荒目のヤスリ・とものすごくたくさんの
削り方ができるマシーン。この機械で新しくつけたヒール部分を削ります。
新しく装着したヒールの出っ張った部分を丁寧に削ります。
火花が散るのでなんか「かっちょいいな~」
再びヒールの踏み付け部分を再調整。
綺麗に細かめのヤスリ機で外部のフォルムを調整。
修理完了!と言う流れです
その他にも男性用の革靴やブーツ。
カバンの修理や革製品などの修理も行っているようです。
小澤さん
男性用の革靴はソール部分(靴の裏面)がよくすり減って壊れる事が
多いのとソールとアッパー(表の皮部分)をつなぐ縫い部分の糸が
稀ですが切れる事があるんですね。その場合は靴を全部分解してもう一度糸で
縫いまた再構築していくというのが修理過程で大体1ヶ月~1カ月半
かかります。ソールのすり減りは約2日ぐらいで治りますね。
小澤さん
靴の修理をするとたくさんの皮のごみが出るんですね。
ほらこんな感じです。アウトソールの部分なんですが
ここまでは「普通の靴の修理屋さん」なわけですが
この後非常に面白い話を聞く事に。
小澤さん
新しくソールを切り出すと右のこのような皮の切れ端が出るんですよ。
いつも捨てるのをもったいないなと思いこういったキーチェーンを作ったり
しています。
恵比寿新聞
可愛いですね。その他には廃材でどんな物を作ったりしてるんですか?
小澤さん
これは自転車に乗る人のズボンの巻き込みを防止するカバー。
その他ですと僕たち「skin project」とプロジェクトをやっていて
思いっきり話がそれるんですが、
DUOリーグと言う文京区・豊島区・足立区・中央区の高校運動部と
クラブユースによるユース(U-18)サッカーリーグがあるんです。
でもそのリーグで優勝したチームに渡す優勝トロフィーが無くなったんです。
恵比寿新聞
え~っと。。小澤さん話が思いっきりそれましたね(笑)
小澤さん
で、「トロフィーがない!」を合言葉にトロフィーをみんなが履きつぶした
サッカーシューズで作ろうというプロジェクトを「KOSUGE1-16」という
土谷享さん、車田智志乃さん2人によるアートユニットさんが企画して
巨大なシューズトロフィーを作ったんですよ。
でか(笑)
恵比寿新聞
え?ちょっと待てください。みんなが履きつぶしたサッカーシューズ
っておっしゃいましたよね?それを継ぎはぎで大きなシューズを?
小澤さん
はい。すべて履きつぶしたシューズを分解して1枚1枚つなげて
60cmの大きなシューズトロフィーを作ったんですよ。
コンセプトもさることながら面白いプロジェクト。
優勝したチームが毎年このシューズトロフィーを争奪して
色んな学校を回っていうそうです。良い話だなー。
恵比寿新聞
という事は小澤さん、靴も自作で作れるって事ですよね?
小澤さん
はい。僕が作った最初の靴みます?
小澤さん
これは僕が学生時代に作った靴なんですよ。
その後、友達に頼まれれば作るという事をしてたんですが
恵比寿新聞
大体靴の制作期間はどのくらいなんですか?
小澤さん
仕事の片手間でやっていればやはり8カ月はかかりますね。
恵比寿新聞
その他の靴の作品ってありますか?
小澤さん
これもそうですね。
恵比寿新聞
ではお客さんに「世界で一つだけの靴つくってよ」とたのまれれば
作ったりするんですか?
小澤さん
さすがにそれは無いですね。会って話して自分もシンパシーを感じる人に
しか作れないですね。靴がどれだけ好きとかそういうのじゃなくて
本当にフィーリングですね。作る際もかなり色んなヒアリングを重ねて
その人のライフスタイルに合うオリジナルのシューズを作るようにしています。
恵比寿新聞
でも小澤さんに作ってもらえば小澤さんが生きてる限りは靴が壊れても
治してくれるわけですもんね。
小澤さん
そういう事になりますね。
つい先日もその靴を作った人が治しをお願いされて。その靴は僕も
とても愛着のある靴なんですね。そもそも依頼者がロックやヒップホップや
ブルースなどにも精通するミュージシャンで僕もヒップホップやブラックコンテンポラリー
が好きでたまたま靴を作るきっかけになったのがその方との話で
「HIPHOPで色んな音楽の良い部分を継ぎはぎして再構築しているって凄いよね」
と言う話になり、日本のHIPHOPアーティストのライムスターが以前
「クズの山からディグるお宝」って部分の節があるんですよ。
小澤さん
これは自分の活動にもしっくりきた歌詞だし、その依頼してくれた方からも
「パッチワークで作ってみてほしい」と言われてできたのがこれです。
超かわいいーーーー
恵比寿新聞
一方的に小澤さんが作るというよりもその相手が居て初めて
成立する「何か」を靴で表現してるという感じですね。
小澤さん
そしてパッチワークといえば先ほどお話したskin projectで作った
このシューズは是非見ていただきたいですね。
履きつぶしのサッカーシューズでできた靴
恵比寿新聞
これはすごいですね。いや、ただただその職人ワザとコンセプトに
魅了されっぱなしです。
小澤さん
他にも使えなくなったサッカーボールを材料にこんなものも
作ったりしてて、たまに高校生向けにワークショップなども
行ったりしてるんですよ。
恵比寿新聞
この辺の恵比寿地区も非常に少年サッカーとか盛んで
結構こういうのは喜ばれると思いますよ。
小澤さん
みんなの思い出の詰まったサッカーシューズでこういった
小物も作ったりしてるので喜ばれるかもしれませんね。
いや~本当にこの町にはたくさんの職人さんがいます。
素敵だな~。皆さんも是非靴の修理が必要なら一度行って
小澤さんに話しかけてみるのも良いかもしれません。
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Walker Repair Shop
東京都渋谷区広尾 5-1-31 T/54-1F
電話 03-3449-8083
営業時間
10時30分~19時30分(休み 日曜日、祝日)
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