パスタ・バカ一代‐恵比寿南の「KNOCK 」梶原シェフの人生に影響を与えた3つのパスタ

シェア・送る

半世紀前に一大旋風を巻き起こした
空手バカ一代」。伝説の空手家
大山 倍達の半生を描いた伝記的作品だ。
牛との闘い・プロレスラーとの死闘
異種格闘技戦を経て空手一筋で
スターダムに上り詰める
スポ根漫画の巨匠梶原一騎の全盛期の作品。

そんな「空手バカ一代」のOP曲に
こんな歌詞がある。

空手ひとすじ バカになり
果てなき修行 まっしぐら
見つめた星を つかんでやるぞ

空手に一生を捧げ伝説となった大山倍達。
そんな大山倍達「空手バカ一代」の
パスタ版大山倍達的「パスタバカ一代」
と言って過言ではない逸材がいる。

knock総料理長 梶原 政之シェフ

梶原 政之
1984年3月6日、東京都出身。イタリアピエモンテ州にて修行を積み帰国後、野菜活かした料理とパスタで野菜業界を動かした『AWキッチン』の料理長も歴任。これまでに「パスタ1000本ノック」などの1000種類のパスタを作る過酷な偉業に挑戦し日本でもパスタの種類は最大級と言われるKNOCK の総料理長を務める

まさにそんな「パスタバカ一代」な
梶原シェフに今回人生に影響を受けた
3つのパスタを教えてもらおうと
取材に向かったのでした。

梶原シェフ
うぁ~。マジでうれしいー。恵比寿新聞の取材受けれるなんて~。

恵比寿新聞
こちらこそ光栄です。恵比寿南のパスタの殿堂「KNOCK」は住民からも愛されるお店へと成長しているのを電信柱の陰からひっそりとみていたんですよ。

梶原シェフ
えー。ありがとうございます。うれしいなー。

恵比寿新聞
ところでシェフ。今回はそんなパスタバカ一代梶原政之が人生に影響を受けた3つのパスタと題し、今まで生きてきた中で人生のターニングポイントとなったパスタをご紹介して頂きたいのですがよろしいでしょうか?

梶原シェフ
えー!?人生に影響を受けたパスタ3つ!?・・・・んー。いいですよ!

KNOCK CUCINA BUONA ITALIANA EBISU

「KNOCK」とは、2011年12月に六本木にOPENした北イタリアのピエモンテ州に特化したイタリアン「KNOCK CUCINA BUONA ITALIANA(ノック クッチーナ ボナ イタリアーナ)」を皮切りに恵比寿店も含めると現在4店舗のKNOCKが存在する。パスタを中心に梶原シェフが影響を受けたピエモンテ州の料理が楽しめる。

恵比寿新聞
それでは梶原シェフまずは「一番最初に衝撃を受けたパスタ」を教えてもらいたいんですが。

梶原シェフ
おぉ!いきなりですね!一番最初に影響を受けたパスタですよね・・・ん~。あっ!ありますね。衝撃だったパスタありますね~。

恵比寿新聞
お!聞きたい食べたい!

梶原シェフ
じゃあ厨房に行きましょうか?

笑顔で調理する梶原シェフ

恩師がつくる素材を生かしたパスタ

梶原シェフ
ぼくがこの世界に入るうえで最もお世話になった恩人が居るんですよ。今は渋谷の桜丘で「ZUCCA(ズッカ)」というイタリアンをやってらっしゃる秋元和仁シェフなんですが。秋元さんとはもう20年来の仲で。僕が下積みの時からお世話になっているんですよ。

恵比寿新聞
秋元さんとの出会いはどういうものだったんですか?

梶原シェフ
元々イタリアでシェフされてた秋元さんが日本に帰って来た時のお店で一緒に働かせて頂いていて。その後そのお店から秋元さんが自身でお店を千葉でOPENさせるという時に僕も一緒について行かさせて頂いたんですよ。

恵比寿新聞
まるで子弟のような関係ですね。

梶原シェフ
その時に秋元さんが出していたローストした丸ごとのトマトが上に乗ったペペロンチーノが僕の料理人生の中で一番最初に衝撃を受けたパスタですね。

高知県 麻岡さんのフルーツトマト

素材の大切さを教えてくれたパスタ

梶原さん
秋元さんと千葉で二人三脚でお店を切り盛りする生活がスタートして休みの日は農家さんを回って料理に使う野菜を見に行ったりと、そんな中で料理には「素材」の大切さが重要だという事が身についたのも秋元シェフのおかげなんですよ。

恵比寿新聞
まさに今梶原シェフが作っている丸ごとトマトのペペロンチーノもトマトの素材ありきの料理ですもんね。トマトのポテンシャルにかなり左右される料理ですね。

梶原シェフ
そうなんですよ。実はこの「丸ごと・ロースト・ペペロンチーノ スパゲティ」は僕の独自のアレンジも加わっているのですが、元々トマトを厳選しています。ある時は必ず高知県の麻岡さんが育てたフルーツトマトを使用しているんですよ。

恵比寿新聞
確かに高知県はフルーツトマトのメッカと言われていますもんね。

笑顔で調理する梶原シェフ

海外に行けと進めてくれた恩師

恵比寿新聞
じゃあ結構秋元シェフと共に過ごす時間が長かったんですね。

梶原シェフ
そうですね。素材に対しての向き合い方も学びましたし、「海外に行くなら今しかないよ」と言ってくれたのも秋元シェフでしたから。

恵比寿新聞
そっか。そこで梶原シェフがイタリアへ行くんですね。

梶原シェフ
そうなんですよ。秋元シェフの勧めもあってイタリアのピエモンテ州のトリノに修行に1年半修行に行ってきたんですよ。

恵比寿新聞
え!?トリノ!?先日取材したdaikanyama takeの大上シェフもトリノで修行されてましたよ!

梶原シェフ
え!?そうなんですか!?すごいはなし!あっ!できあがりました。

丸ごと・ロースト・ペペロンチーノ スパゲティ

お客様の手間で完成するパスタ

恵比寿新聞
これは梶原シェフが最初に影響を受けたパスタかー。

梶原シェフ
恵比寿新聞さん。実はこのパスタはお客様の手間が入って初めて完成するパスタなんですよ。

恵比寿新聞
お客様の手間?どういうことですか?

梶原シェフ
田中!ちょっとこっち!

田中店長
はいー!

梶原シェフ
恵比寿新聞さんにおしえてさしあげて。

田中店長
あいあいさー!

店長の田中さんが実演

田中店長
恵比寿新聞さん。用意はいいですか?

恵比寿新聞
え!?・・・まだ心の準備が・・・痛いですか?

田中店長
痛くないです。まずはローストしたトマトを上からブチューっと潰します

恵比寿新聞
ギャー( ゚Д゚)

シャカシャカシャカ

田中店長
つぶれましたらトマトを崩しながらスプーンとフォークで混ぜます。

恵比寿新聞
ギャー( ゚Д゚)田中店長のフォーク捌きが高速すぎて全く見えません!

田中店長
とにかく考えないで感じてください

恵比寿新聞
don’t think feel ですね。

左横のスープに注目

田中店長
恵比寿新聞さん見えますか?

恵比寿新聞
僕にはまだスプーンもフォークも高速すぎてみてなくて、むしろ田中店長しか見えていません。

田中店長
ちがう。このスープの色。今はまだこの色ですがオレンジ色になるまでよく混ぜてください。お皿の中で乳化させるんです。

恵比寿新聞
オレンジ色になると食べ頃なんですか?

田中店長
その通りです。

できあがり

田中店長指導の元出来上がりました
こちらのパスタ。頂いて大感動。
ローストしたトマトは旨味成分が
一気に上がるので一口目にまず
トマトの旨味とほのかな酸味と
大地の甘味が口に拡がります。

例えるならパンツのままお風呂に
入ったようなあの背徳感とあのじんわり感。
食べた瞬間に恵比寿新聞怖くて右・左と
確認しながらの実食でございました。
ふぅ~。これはママにバレたくない旨さ。

バレバレですよと声をかけてくる梶原シェフ

ビクッーーン!
さすが「パスタバカ一代」。
一ラウンド目から凄いパンチが
飛んで来たぜ。。ふぅ~、、

恵比寿新聞
梶原シェフ。これはマジでヤバいパスタですね。時空を超えてしまいました。

梶原シェフ
ヤバいですよね(笑)

恵比寿新聞
それでは次のパスタなのですが。今までにも恵比寿新聞では色んな料理人の方を取材続けてきて美味しい料理には一つの共通点があると思っているんです。それって何かというと料理から出てくる「その人らしさ」なんです。

梶原シェフ
はい。

恵比寿新聞
梶原シェフが今まで料理を続けてこられて初めて「自分らしさ」を見つけたパスタを第二ラウンドお願いしたいんです。

梶原シェフ
自分らしさかぁ~。やってみましょう!

ん!?なに肉!?

恵比寿新聞
シェフ?これはなんの肉!?

梶原シェフ
これ。ラム肉ですよ。

恵比寿新聞
ラム肉!?イタリア料理って羊肉使うんですね?

梶原シェフ
ピエモンテ州は山が多いのでジビエとかよく使うんですが羊料理も結構あるんですよ。

赤い液体が・・・・

恵比寿新聞
シェーーッフ!(x-japanのX風)この赤い液体はなんでしょうか?

梶原シェフ
これは赤ワインですね。

恵比寿新聞
これ赤ワインだけじゃないんじゃないですか?

梶原シェフ
わかります?実は羊の旨味が入っているんですよ

恵比寿新聞
エーーックス!(もうシェフと言わなくなった)これはカリフラワーとオリーブですね。

梶原シェフ
そうなんですよ。カリフラワーとオリーブですね。

恵比寿新聞
しかしラム肉と赤ワイン・カリフラワーとオリーブをパスタに!?想像がつきません。あっ。そういえばKNOCKって指定のパスタってあるんですか?

梶原シェフ
あ。それ聞きます?

1.7㎜のこだわりの世界

梶原シェフ
実はKNOCKで使っているスパゲッティーニはオリジナルの特注品なんですよ。平均的に自分が作るパスタの内容も考えると1.7mmのスパゲッティーニが一番良くて。しかし市販の1.7㎜のパスタであまり自分が気に入るものが味もコスト的にも少なくて。素晴らしいご縁を頂いてKNOCK独自の麺なんです。

恵比寿新聞
1㎜違うだけで食感も違いますもんね。大体スパゲッティーニと言えば1.6㎜~1.8㎜って世の中では言われていますけど、KNOCKで使う麺はいわゆるスパゲッティーニの中でも「中太」ですね。その他、パスタを作る時、特にこだわっている事ってありますか?

梶原シェフ
そうですね。ソースとパスタのからまり具合は一番気にしていますね。混ざりが弱いとしっくりこない。混ざりすぎると良くない。絶妙の加減があるんですよ。

恵比寿新聞
シェーーックス(もう原型を留めていない)今乗せているのはなんですか?チーズ?

梶原シェフ
いえ。これはさっきのカリフラワーをボイルもせず、グリルもせず、そのまま生で削ったものです。

恵比寿新聞
生!?カリフラワーって生で食べれるんですね?

梶原シェフ
そうなんですよ。アメリカではじめてこのカリフラワーを生でサラダで食べるという時があってそれがヒントになってるんです。

恵比寿新聞
シェーーー(・・・)何燃やしているんですか!?

梶原シェフ
あ~。これ。ローズマリーを香りづけに。

恵比寿新聞
わぁ~(*’▽’)素敵な香りが~(*’▽’)

梶原シェフ
はい。出来上がりました!

カチャトーラ・ポモドーロ スパゲティ

「自分らしさ」の詰まったパスタ

見た目にも鮮やかなこのパスタ
「カチャトーラ・ポモドーロ」。
カチャトーラは元々「森の~」を
意味する言葉で「ポモドーロ」は
トマトという意味ですが、実はこのパスタ
トマトを多用していません。
赤みがかったパスタのこの色は赤ワイン。

梶原シェフ
トリノではこんな赤ワインで煮込んだスパゲッティーが沢山あるんですよ。それを僕なりにアレンジしたのがこのスパゲッティー。この「カチャトーラ・ポモドーロ」という名前はスタッフがつけてくれるんですね。是非食べてみてください。

昔々あるところにinstagramが大好きな
小娘が居ました。その日インスタ映えする
パスタがあると聞きつけその娘は人気の
「カチャトーラ・ポモドーロ」を注文しました。

出て来た「カチャトーラ・ポモドーロ」は
予想をはるかに超えるであろう
パスタの宝石箱と呼んでも過言ではない
赤や紫や黄色のまばゆい色彩のパスタでした。

小娘は予想を超えたパスタの状態に興奮し
とにかく一生懸命そのまばゆいばかりの
色彩豊かなパスタの写真を撮り続けていました。
するとどういう事でしょう。
小娘が食べる時には麺が茹で上がり
パスタも冷めてしまい味が半減してしまいました。

教訓
写真はほどほどに熱いうちに食べようね

とにかくこのパスタは不思議です。
赤ワインの芳醇な香りをパスタがガウンの
ように身にまとい、パスタの温度感で
ワインの香りがパフュームのように
舞い散り、絡みつくカリフラワーや
オリーブや羊たちがフォークという
ノアの箱舟にインクルージョンされ
口に入ると「メェー」と暴れ出す羊を
おさえるかのように生のカリフラワーが
シャリとサクッとまとめてくれるような
非常にどこにもないお味。すばらしい。

恵比寿新聞
ワインがこんな形でパスタと握手する姿始めてみました。しかも梶原シェフのバックボーンが見えるような。梶原シェフを踏襲したようなそんなパスタですね。

梶原シェフ
ありがとうございます。うれしいなぁ。

恵比寿新聞
さて、最後になりましたが。最後はここ「KNOCK」で最も一押しのパスタをお願いしたいと思います。

梶原シェフ
りょうかいです^^

楽しむ事を忘れないチーム

恵比寿新聞
取材している中で梶原さんにとってお店ってなんだろうな~と思いました。特にスタッフの皆さんのこの「家族感」がなんだかお客さんに伝わるくらい強力なものを感じます。

梶原シェフ
僕のとってというよりKNOCKのスタッフって本当にKNOCKが好きなんですよ。ほぼスタッフは元お客さんだったりという流れが多くて、休みの日でもKNOCKに遊びに来るというような「家族」みたいな存在ですね。

恵比寿新聞
このコロナ禍の中でしっかりと営業しているのもそんな「家族」であるスタッフさんがいるからなんだろうなぁ~と思いました。

恵比寿新聞
どうですか?目の前にして言いづらいかもだけど。梶原シェフって厳しい?

水戸シェフ
優しいけど厳しいです!

恵比寿新聞
なにそれ(笑)「甘いけど辛いです」みたいな表現(笑)

水戸シェフ
愛があります

なんなんだろう。このあたたかいさは。
良いお店ってもちろん美味しい料理という
のは大前提ですがそんな料理を口に運ぶまでの
プロセスを作り出すスタッフの皆さんのこの
「楽しんでる」というのは不可欠だな。

見てください。この「やらされている感」が
全く感じない笑顔に満ちた職場風景を(笑)
「楽しむ」という事がどれだけ人間にとって
尊いのか。素晴らしい職場だな~。

街に活きる レストランでありたい

恵比寿新聞
いいチームっすね~。

梶原シェフ
ありがとうございます。年に一度背伸びしてくるお店というよりも毎日でも来れるような店にしたくて。子どもと一緒にとか、家族でとか、たまにはビジネスでとか。恵比寿の人たちが本当に暖かい人たちだから普段使いで気軽に来てほしいんですよ。

恵比寿新聞
このチームなら安心して身をゆだねられますね。あ!最後のパスタが!

最後のパスタ

恵比寿新聞
うぁ~こりゃーカラフルですなー!パスタの名前は?

梶原シェフ
「厳選トマトが美味いから!」スパゲティです。

恵比寿新聞
え・・・・

梶原シェフ
「厳選トマトが美味いから!」スパゲティです・・・

恵比寿新聞
ネ・・ネーミングださっ(笑)

「厳選トマトが美味いから!」スパゲティ

恵比寿新聞
「じゃあ俺は”厳選トマトが美味いから!”を一つおねがいします。」とか頼みずれー(笑)だってさっき「カチャトーラ・ポモドーロ」とか言ってはりましたやん!え?このネーミングはスタッフの皆さんが!?

梶原シェフ
いや。うちの代表の横山が(笑)

恵比寿新聞
まじか(笑)センスを疑うレベル(笑)直球ストレートど真ん中の藤川球児スタイルじゃないですか!(笑)

これは農林水産大臣賞ものですよ

日本のトマトの英知の塊

この「厳選トマトが美味いから!」を
頂いてみました。代表の横山さん。
すみませんでした。恵比寿新聞もこの
フレーズしか思いつかないぐらいの
衝撃でございました。

とにかく凄いのがこのトマト!
先ほども触れましたが高知県
土佐市でフルーツトマトを栽培する農家
麻岡さんが作る小ぶりのフルーツトマト。

糖度が多分12度以上あるのではないかと
いうほどの大地の甘さ。それだけではなくて
かすかな酸味とトマト独特の旨味成分が
ビッシリビシビシとこのパスタにパンパンに
詰め込まれた逸品でございます。

例えるならずっと「シガスカオ」と
思ってたのに本当は「スガシカオ」だった
ぐらいの衝撃のお味。日本のトマトの
素晴らしさもさることながら、見た目も
これほどに美しいとはすばらしい。。

恵比寿新聞つくづく思うのですが
「美味しい」を作り出すのは決して
料理だけではなくて「美味しい」を
醸し出す人や場所だと思っています。

KNOCK恵比寿にはそれがある。
緊急事態宣言の中で大変な時期だと
思いますが是非皆さんも足を運んでみては?

🏠KNOCK恵比寿店
渋谷区恵比寿南1-17-17 Time Zone テラスビル 1F
03-6452-4057

2021年1月8日より当面の間は、
全日20時までの営業となります。(ラストオーダー19時)

<月〜金>
11:30-20:00(L.O.19:00)
※14:00までランチセット、
14:00以降はアラカルトメニュー

<土日祝>
11:30~20:00(L.O.19:00)
※終日アラカルトメニュー
定休日 無

シェア・送る