パリ1区ポンピドゥーセンターや
ルーブル美術館などの施設が隣接する
リヴォリ通りのど真ん中に
ちょっと変わった建物があります。
1999年11月1日。
国と銀行が所有していたビルの
空き室をアーティストたちが
不法占拠したことから始まったのが
「59 Rivoli」(不法占拠ビル)
3人のアーティスト(Kalex, Gaspard, Bruno)
よりこのビルは不法占拠されることになります。
その不法占拠をしたアーティストたちを
squatters(スクワッター)と呼び
約30人のアーティストが
空室で日常生活・アート活動を開始。
実はそんな伝説のスクワット「59 Rivoli」
で活動していた1人の日本人女性がいます。
ETSUKO KOBAYASHI
通称「エツツ」
実は彼女が11月9日~15日の間
恵比寿で一番小さなギャラリー
「山小屋」をSquad(スクワッド)
し小さな山小屋で生活することに
なりました。
何を隠そう「エツツ」と「恵比寿」の
つながりは深い。というのも
恵比寿に生まれ恵比寿に育った
ノンフィクション作家
「川内有緒」の存在がある。
川内がパリの国連に務めている
30代の多感な時期にエツツと知り合い
スクワットに出入りするようになります。
59 Rivoliに出入りする個性豊かな
住民たちと今回の主役でもあるエツツと
親交を深めるうちに彼女の天真爛漫さ
そして秘めたる何かに川内は魅了され
その当時パリの生活を赤裸々に書籍化。
以後再販が何度も行われる人気作品
「パリで飯を食う」
になるのです。今回はそんな川内有緒と
現在来日中のアーティストのエツツ氏
そして「59 Rivoli」の創設者のひとり
でもあるブルーノ氏にお話を伺いました。
誰もが行き来できるフリーダム
恵比寿新聞
エツツさんはこの「59 Rivoli」で生活するきっかけは?
エツツ
えーっとね。実は散歩していて通りがかっただけで(笑)なんか変な建物があるな~学園祭でもやってるのかな~とフラッと立ち寄ったのがきっかけで。引き寄せられたっていうのかな?ちょっと怖かったんだけど。でも中に入ってびっくり。
恵比寿新聞
びっくりというのは?
エツツ
だって中はアートだらけでみんな自由すぎて「うぁ・・・私の居場所はここだわ」と思ってそれから気づいたら住んでた的な。
恵比寿新聞
中では何人ぐらいの方が住んだりアート活動していたんですか?
エツツ
私がいた当時は30人ぐらい居たかな~?いるのかいないのかわからない人も居たしとにかくカオスでしたよ。
恵比寿新聞
いわゆる不法占拠しているわけですもんね。電気とかどうしていたんですか?
エツツ
盗電ですよ(笑)となりの電線から引っ張ってきたり。
ブルーノ
デンキモラッタ!
恵比寿新聞
(笑)
川内有緒との出会い
恵比寿新聞
そういえば川内さんとエツツさんの出会いは?
川内有緒
当時私はパリの国連に務めていた時で。妹の佐知子の同級生の土屋洋介くんがパリにいるってことを知って「ひさしぶりに何してるのかな?」と連絡を取ってみたら洋介君が「いや~今俺超面白い事やってるんだよね~」って言ってて。
恵比寿新聞
ほうほう。
川内有緒
会いに行ったのが「59 Rivoli」だったんですよ。
気づいたら友達になっていた
川内有緒
行ってびっくり。みんな自由すぎて(笑)そんななかで洋介君から「実はこのスクワットに日本人の子もいるんだよ~」と紹介してもらったのがエツツで最初は「こんにちわ~」と会釈するぐらいの仲だったんだけど。
エツツ
そうだっけ?
川内有緒
で、徐々に距離も近づいてエツツの話や作品や今を生きている世界観とか見たり聞いているうちに「絶対に彼女は発信するべき!」と思うようになって私からも「エツツもっと発信すれば?」なんて話したんだけど。
エツツ
いやいや。そういうの苦手(笑)今は無理(笑)ってね。
川内有緒
でもそこで何か引き下がれずにいた私がいたんですよ。なんでだろう?比較的退屈な国連で働いていてこのスクワットに出入りして多種多様な自由な人たちを見て「いったい私って何やりたいんだろう」という漠然とした感覚もあって。自分でも発信したいって思うようになって。発表するあてもない文章を書き始めて。そしてエツツの話を録音したんですね。その録音した物がこの後の「パリで飯を食う」の題材になっているんです。
恵比寿新聞
ってことは作家になるのも筆をとるのもエツツさんの出会いがなければ川内さんは作家になってなかったってこと?
川内有緒
そういう事ですね。
フランスの不思議な法律
恵比寿新聞
そういえば話は戻るんですが不法占拠していた「59 Rivoli」。警察とかの動きはなかったの?
エツツ
国から不法に占拠した罪で訴えられたんだよね?ブルーノ?
ブルーノ
ツカマッタヨ!デモ48時間イタラダイジョウブ!ツカマッタケドダイジョブ!
恵比寿新聞
ん?どういうこと?
エツツ
えーっとね。フランスの法律で不法占拠後、48時間経過してたらなんだっけかな~なんとか権っていうのが発生して・・・・なんだっけ?
恵比寿新聞
居住権?
エツツ
イエーッス!そうそう!!居住権がもらえて一時期居てもいいことになるんだよね。
フランスの居住権
誰も管理していない空いている建物は占拠されてから48時間過ぎると占拠したスクワッターに一時的に居住権が発行されるというフランスの法律
ダイジョウブダッタヨ
恵比寿新聞
んじゃあ捕まったけど48時間前から占拠していたから大丈夫になったんだ?
ブルーノ
ハイ。ダイジョウブ。
エツツ
その後「59 Rivoli」は合法的に使えるように国が建物を買い取ってアーティストに開放したんだよね。
恵比寿新聞
おぉ~!!!じゃあ今まで通り住めるわけですね。
エツツ
ん~・・・実はそうじゃないんだよね。。
合法的にはなったけど
恵比寿新聞
ん!?合法的にアーティストに開放したあとはどうなったんですか?
ブルーノ
スメナクナッチャッタヨ
エツツ
国が買い取った影響で管理されるようになり、居住はできなくなったんだよね。なのでギャラリーとして機能するようになったってわけ。
恵比寿新聞
という事は昔のような自由でカオスな現状は?
ブルーノ
ナイヨ。イルハペイスルニナッタヨ。
エツツ
昔は不法占拠しているので誰もがお金を払うことはなかったんだけど、国が買い取って合法化されてからは家賃が発生して昔様なカオスな自由さがなくなった。
スクワットはつづく
エツツ
2009年から合法化されて「59 Rivoli」はリニューアルすることになって。以前とは違うシステムになったのでブルーノと一緒にまた違う場所をスクワットすることになって。
恵比寿新聞
え!?まじで・・・
エツツ
「シャルダン・ド・アリス」という昔アリスというお婆ちゃんが住んでいた古い洋館と広大な庭のある空家をスクワットしたんだよね。その時ブルーノが庭に小さな小屋を作って。
ブルーノ
トントンツクッタヨ!ヤネワラダヨ!
川内有緒
それが本当によくできていて熱の電動を考えて作られていたり、トイレもコンポストで野菜くずもコンポストに入れて肥料として畑に使って野菜やハーブを育てていたり。
恵比寿新聞
いわゆるエコハウスですね。
ブルーノ
ハイ。エコハウス。
エツツ
自分の作品の中にも「循環型」ってテーマが多くて。ほらこれとか。
恵比寿新聞
おしっこしとるやないですか(笑)
エツツ
おしっこは土に帰って肥料になって自分たちが食べる野菜を育てて、その野菜を食べて、またうんちしてという循環している生活を当時していたからこんな作品ができたんです。
恵比寿新聞
なるほどね~。で。そのエコハウスは?
エツツ
2013年にシャルダンドアリス自体を国が買い取って立て壊しになって今は公営住宅が建ってる。
今回は初の作品集を発表
恵比寿新聞
そういえば今回今までの2001年~2016年までの作品を初めて作品集にする事になったと聞いたんですがここまで経歴があるアーティストなら作品集って何冊か作っててもおかしくないのに、なぜ今まで作らなかったんですか?
エツツ
もともと自分は作品のアーカイブを作ったりとか興味がなくて。友達から勧められました。
川内有緒
エツツとの共通の知人の増山やよいちゃんから「エツツの作品集を作らない!?」と言われて「絶対にやりたい!」と思い資金などもクラウドファンディングで集めて今回作品集もできることになったんです。そして今回の恵比寿山小屋での展示も2001年から2016年までのエツツの作品を集めて展示することになったんですよ。
「在廊」じゃなく「住む」
恵比寿新聞
で、しかもこの作品展示期間中はエツツさんとブルーノさんこの山小屋で生活するってほんとうですか?
エツツ
はい。住みます。
恵比寿新聞
お風呂とかどうするの!?
エツツ
今は寒いからそんなに入らなくてもね~?ブルーノさん?
ブルーノ
ダイジョウブ!
恵比寿新聞
でも外から丸見えじゃないですか?(笑)
エツツ
いいんじゃないですか?^^
という事でとてもフレンドリーなお二人に
会えるチャンスでもあり、「パリで飯を食う」
を読者であればかなり必見の展示会。
展示期間中、今回の作品集の販売や
謎のグッズやなんとパリのスクワットで
川内有緒とエツツの秘蔵録音会話が
収録されたCDまでついてくるという。
是非足を運んでみてはいかがでしょうか?
ノンフィクション作家 川内有緒が
今月新書を発表しました。
作品名は「晴れたら空に骨まいて」
大切な人を思いながら、生きていく。
爽やかな涙あふれるノンフィクション。
大切な人への想いをのせて、
白い粉はふわりと舞いあがり、
青い空へと吸い込まれた
セーヌ川にかかる橋、
南国の「珊瑚の海」、
ヒマラヤの麓など、
思い出の地での散骨をテーマに、
かけがえのない人を亡くした人たちが、
軽やかに行き続ける姿を
ユーモラスにやさしく綴る、
傑作ノンフィクション。
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実は来る11月26日(土)
恵比寿ガーデンプレイスCOMMON EBISUにて
川内有緒新作の「晴れたら空に骨まいて」
の発売記念トークショーを開催します。
なんとナビゲーターは不肖恵比寿新聞
編集長のわたくしめが担当させていただく
事になりました。というのもこの本の
題材は「大切な人を亡くした」という
テーマ。私情ですがわたくしの父も
昨年の11月27日に亡くなりまして、
なんと父の1周忌の前日にトークショー
という運命でしか思えないオファーを
頂きお話しさせていただくことになりました。
詳細は恵比寿三越八重洲ブックセンター様
のホームページをご参照ください。