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広尾ちゃんこの老舗「玉海力」が21年の営業に幕。閉店の理由・歴史を社長にロングインタビュー

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ニュースは突然やってきた

7月初旬。以前から飲み屋で何度か

お世話になっていた玉海力の社長

河邉さんのFacebookにて衝撃の事実を知る。

玉海力9月で閉店

え!?・・・いやいや・・・・

めっちゃ繁盛しているじゃないですか?

いやまてよ・・・もしかして・・・・

嫌な予感は的中しました。それは。。

広尾再開発

ずいぶんと前から広尾駅周辺の再開発が

取り沙汰されておりまして、

出ては消え出ては消え。一説の噂では

「広尾駅が駅ビルになる~」なんて

トンでも話まで出るほど。真相は闇の中。

しかし、最有力で開発されるんじゃないか?

と言われていた場所がこのほど新しく

「広尾5丁目計画」という名のもと

この辺が大きく再開発されることがわかった。

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上記の写真の左側マンションビルから

一軒中華料理屋さんの建物を入れて

玉海力までがレジデントマンションと

商業施設になるという計画。

そんな状況のなか、

玉海力のオーナーでもあり元力士の

河邉社長にお忙しい中お話を伺うことに。

同じ悩みを持つ方もいらっしゃるのではないかと

今回は赤裸々に語ってくださいました。

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事の真相

実は玉海力こと河邉社長は恵比寿生まれ

恵比寿育ち!加計塚小学校出身!

そんな事から恵比寿新聞も可愛がって

いただいておった訳ですが最初の取材が

こんなかたちになるとは・・・・

恵比寿新聞
いやはや・・・なんと言えばよいか・・・んーー。。

河邉社長
はい。残念で仕方がないです。しかしもう決まったことですから。

恵比寿新聞
そもそもこの開発の計画はいつ聞かされたんですか?

河邉社長
もう10年前ぐらいから広尾駅の開発の話などがちらほら出ており「開発があるんじゃないか?」という噂ベースの話はたくさん有ったんですが、昨年2016年の1月に建物側の弁護士事務所からいきなり「半年で出てほしい」という通達が来まして。

恵比寿新聞
えーー!?半年ですか?!2016年1月ですから2016年の6月までには立ち退いてほしいということですよね?通常恵比寿や広尾でお店をやりたいって子でも最低1年は物件探しに時間費やしているこのご時世に。。。

河邉社長
はい。

恵比寿新聞
長い期間ずっと営業してきていきなり「半年で出てくれ」なんて。。精神的にも物理的にも厳しいですよね?

河邉社長
そうですね。国内に4店舗。海外に2店舗の「玉海力」の創業の地でもありますし、事務所もお店の隣のマンションで便利もよいですし、現在も売り上げも上がっていましたので。

恵比寿新聞
お話によると事務所を置かれているマンションも開発で立ち退きになると。お店の隣の隣のマンションですよね?

河邉社長
はい。もともと事務所の入っているマンションも耐震が古すぎてここの大家が売るということになったんですよ。事業に失敗したかなにかで。しかもマンションビルの大家と玉海力のお店の土地の大家は同じなんですよ。どちらの土地も売ったものですから大手のデベロッパーが入ってきて立て壊すため立ち退きになったというのが現状です。

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立ち退きのお話し

恵比寿新聞
物理的に半年で出ていくなんて考えれば考えるほど無理ですよね。。

河邉社長
晴天の霹靂です。半年で今の場所に近い立地で条件も同じなんてお店を見つけるほうが難しいです。ましては現状地代も上がってますし。さらには家族同然の従業員もいますから。

恵比寿新聞
どうされたんですか?

河邉社長
無理というしかないですよね。向こうも弁護士をよこしてきたので、うちも顧問弁護士がいますから「今すぐは無理だ」と突っぱねてたんですよ。すると「立ち退き料」の明示があったんですね。

恵比寿新聞
立退料ですか?どのくらい出るもんなんですか?

河邉社長
1カ月の売り上げにも満たない額ですね。。愕然としましたね。。

恵比寿新聞
え!?。。1カ月分の売り上げ?そもそも「立ち退き」自体の相場ってあるんですかね。。1カ月の売り上げって。。
※立ち退きの相場は存在せず裁判に発展すれば個々の現状から「立退き料」は算出されるようです

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裁判へ

恵比寿新聞
そうなると双方の言い分が折り合わないということは裁判になるということですね。

河邉社長
先方の弁護士にもお会いしたんですが対応がきわめて不誠実だったんですよ。なのでお店も出ていくつもりもなかったので全面的に戦いましょうと。すると翌月に向こうから「訴状」が届いたんですよ。8名の弁護士の連名で。裁判やろうということになりました。

恵比寿新聞
8名の連名で。。。なるほど。。青天の霹靂でしかも通常の業務には必要ない時間と労力が割かれるわけですもんね。。

河邉社長
すると裁判が進むにつれ事務所の入っているマンションの住民もどんどん引っ越ししてゴーストマンション化して来そうになるんですよ。そうすると灯りもつかないですし、どうしても「寂れた感」も出てくるので。双方お互いにとっても街にとってもこのままだと良いことはないと判断して和解をすることにしたんです。

恵比寿新聞
めちゃくちゃ難しい問題ですよね。。自分が立ち退かないことで街の景観が損なわれるなんて社長自身も本望ではないと思うし、でも営業はここで続けたいという思いもあり。。複雑すぎる。。裁判はいつ終わったんですか?

河邉社長
今年の6月ですね。裁判も終わり、9月29日に閉店することが決まりました。

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経営者としての判断

恵比寿新聞
今後の予定とかあるんですか?

河邉社長
いかんせん6月中旬にこの話が決まったものですからまだ全然未定ですね。。今年の5月までは「来年まで営業できるかも」という弁護士とも話にもなっていたんですが。今こうなって、次、店出したいなという思いもありましたけど、現在スタッフもこれからですので銀座店で頑張ってもらって育って来たら独立などなど、現在も頭の中でまだグルグルと回っているような状況です。ちょっとほかのメディアで「すぐにでもお店の出店を考えている」的な一方向の情報が出ましたが、現状は「思案中」です。

恵比寿新聞
いろんなタイミングが合わないと何をやるにもリスクが大きすぎますよね。

河邉社長
そうなんですよね。無理して出店しても自分の首絞めるだけですからね。毎日のように物件情報が来ますけど、内容を見てみると相当飲食店側に負担が行くような金額の物件多いですよね。この件はにも書きましたけど。

恵比寿新聞
本当に、特に恵比寿は家賃が・・・みんな苦労しています。。

河邉社長
まぁ無理してお店やって失敗する例は本当に多いですから。時とバランスですね。とにかくうちは社員を育てていければと。

 

建物老朽化に伴う開発による「立ち退き」という事案。昭和40年~50年、築40年以上の建物が現在建て替えの時期に来ているといわれる昨今。実際に立ち退きにあうとこうなるのかというかなりリアルなインタビュー取材となりました。河邉社長ありがとうございました。そして話は「玉海力」の創業からの話に。本来恵比寿新聞が取材したかったお話に。

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21年間を振り返る

恵比寿新聞
いや、繁盛していても「閉める」ということが実際に起きていることに驚きました。大変貴重なお話ありがとうございました。

河邉社長
いえいえ。

恵比寿新聞
そういえば「広尾 玉海力」を始めるきっかけをずっと聞きたかったんですよ!このタイミングをずっと待っていたんです!

河邉社長
そうですね。元々僕は力士だったんですよ。結構いいところまで行っていたんですが怪我して休んでリハビリして復帰してから相撲に勝てなくて。いい時は年収2500万円ぐらい行ってたんですが、最後のほうは年収60万円ぐらいに。

恵比寿新聞
えー・・・年収60万円って。。。月給5万円じゃないですか!!そうか…お相撲さんは月給制ではないですもんね。負ければお給料でない。

河邉社長
そうですね。その頃もう長男も生まれていたので、貯金も尽きて質屋通いになってたんでこれ以上相撲界にしがみ付いていられないなということで未練タラタラで辞めました。もっと相撲やりたかったんだけどね。それで辞めて何しようかなと。

恵比寿新聞
相撲界・・・過酷すぎる・・・

河邉社長
相撲界に残って親方やるという道筋もあったんですがこのまま相撲の世界に生きていくのも嫌だなと思って、何かするしかないなと思って、できることって消去法で考えたら「飲食」だったんですね。

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辿り着いた広尾

恵比寿新聞
でお店をOPENするということになるんですが、社長は恵比寿出身じゃないですか?この辺に土地勘があるから広尾に出店されたんですか?

河邉社長
そういうわけじゃないですね。赤坂や六本木あと渋谷とかを探していたんですよ。たまたま広尾が良い条件であったのでOPENしたんです。

恵比寿新聞
そもそもなんですけど今から21年前って広尾周辺にちゃんこ屋ってありましたっけ?

河邉社長
なかったですよ。ほぼ両国あたりに集中していましたからね。

恵比寿新聞
なるほどな~。それにしてもいきなり広尾の物件大きいですもんね。いきなりあの1階・2階と100人ぐらい収容できるお店を飲食経験なしで始めるってすごいですね!

河邉社長
いやいや。実はOPEN時は2階に家族と住んでましたから(笑)お店は1階だけだったんですよ。

恵比寿新聞
えー!!!???2階に住んでたんですか!!??

2階の個室。ここに創業時河邉家は住んでいました。

2階の個室。ここに創業時河邉家は住んでいました。

恵比寿新聞
2階は住居だったんですね!!

河邉社長
住んでましたよ。2階に。そうこうしているうちに忙しくなってきてアパートに引っ越して2階もお店にしようということになって。

恵比寿新聞
じゃあOPEN時開けた途端にいっぱいお客さんが来たということですね!

河邉社長
そうですね。この辺では珍しかったこともあって、その他引退したすぐだったんで、お客さんが来てくれたりなど。そんなこともあってそれなりに忙しくなりました。夏は暇ですけど。

恵比寿新聞
じゃあそんなにOPEN時はさほど苦労はされなかったんですね。

河邉社長
いやいや。お金もなく借金してお店出したので。あと飲食店素人だったのですべてどんぶり経営で売り上げは上がっていたのに全然利益が残らない状態が続いて。昔だからまだ景気も少しは良かったからいいいけど今の時代であの経営だったらつぶれていましたね。。この10年ぐらいですね。しっかりと利益が残るようになったのは。やはり10年もやっていると経営論というものが身について。

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名物塩ちゃんこ物語

恵比寿新聞
そういえばオープン当時からメニューって変わってないんですか?

河邉社長
いやいや、だいぶ変わりましたよ。もっといっぱい種類がありました。今よりもメニュー数が倍以上ありましたね。もともと力士引退後に先輩の店に3カ月修行させてもらった時のメニューをそのまま真似させてもらって始めたのがきっかけなんですよ。

恵比寿新聞
えー!?今のメニューの倍以上種類があったんですね!やっぱり「玉海力」といえば「塩ちゃんこ」というイメージが強いのですが、OPEN時からあったんですか?

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河邉社長
あー。塩ちゃんこはね。実はだいぶ後にできたちゃんこなんですよ。OPENして3年ぐらいたってから夏限定で出したメニューなんですよ。それがヒットして。

恵比寿新聞
え!?夏限定のテストメニューだったんですか?

河邉社長
とにかくちゃんこ屋さんは夏が暇だったんですよ。夏になんとか食べたくなるような味を作らなければと作ったんですよ。今では7割ほどの方が塩ちゃんこ頼まれますね。

恵比寿新聞
確かに。夏の暑い日に味噌仕立てのちゃんことかきついですもんね。。

河邉社長
元々は相撲部屋で塩ちゃんこっていうものがあって人気だったんですよ。夏はさっぱりした味のちゃんこが食べたいと。相撲部屋のちゃんこはご飯と一緒に食べるので味がしっかりしてスープはあまり飲まないんですよ。でも飲食店のちゃんこはずっと火を通して炊いているでしょ。なので同じ味だと煮詰まっちゃって味が濃くなるのを工夫してできたのがうちの「塩ちゃんこ」ですね。

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恵比寿新聞
もう恵比寿新聞はこの「塩ちゃんこ」に入っている「つくね」の大ファンなんです。なんであんなに芳醇な旨みがでるのかと。

河邉社長
はは。ありがとうございます。かなり試行錯誤しましたから。でもぼく個人のおすすめは「キムチちゃんこ」なんですけどね^^

恵比寿新聞
えー!?食べたことない!!!閉店前に食べなければ。

河邉社長
ぜひぜひ。武蔵小山でも赤坂でも銀座でも食べられますからね。

恵比寿新聞
あと、店の外で焼いている「焼鳥」は大好きですね。

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恵比寿新聞
あれだけ豪快にお店の前で焼いているから人目に着くんですよね。焼き手さんに「今日まだ席ある?」とかコミュニケーションも取れやすいし。

河邉社長
そうですね。

恵比寿新聞
焼きたてのアツアツで出てくるからちゃんこの前の腹ごしらえでビールと一緒に流し込むのが好きでした。あと!玉海力といえば!力士みそ!

河邉社長
よく知ってますね(笑)

恵比寿新聞
これを初めて食べたのは今はなき「玉海力 青山店」で初めて食べて「なにこれ?ウマっ!」となったんですよ。あのまったくしょっぱくなくて独特の肉々しさとナッツの香ばしい感じがキュウリに最高に合っておいしい。

河邉社長
なつかしいねですね~。もう10年以上前ですよ。今は青山店は銀座に移転したんですよ。あれから今では通販でも買えるようになったんですよ。辛口バージョンもあるんです。ネット限定売っていますよ。裏メニューですね。

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玉海力 海外へ

恵比寿新聞
社長は商売上手だな~(笑)今だと広尾を含めれば武蔵小山・銀座・赤坂と都内に4店舗。そして上海とプノンペンにも!?どうやってお店が増えて行ったんですか?

河邉社長
広尾で創業の7年目で武蔵小山店を出して、それからね。ん~。その2年後に青島(チンタオ店)に出して・・・

恵比寿新聞
え!?青島って中国のですよね?

河邉社長
そうそう。その次が青山を出して、次上海店を2011年に出して、青山店が狭いので2011年に閉めてそのまま大きい銀座店を出して移転したんですよ。そのあと、2015年にプノンペンか。そして今年2017年4月に赤坂店OPENですね。

恵比寿新聞
すごいですね。海外だと「ちゃんこ鍋」ってなんて呼ぶんだろう?「スモウポット」とか?

河邉社長
suki-soup(スキスープ)ですね。

恵比寿新聞
武蔵小山店の次になぜ!?中国の青島に?

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元スタッフの恩返し

河邉社長
中国にはその当時おいしい日本食がなかったんですよ。駐在する日本人も多かったので「日本の味を持ってきてくれ」っていう話があって。その当時玉海力で働いていた中国人スタッフが日本に帰ることになって、そのタイミングで「お店やってみない?」と話すると「日本ではお世話になったから恩返しでやらせてくれ」ということになって。青島店を出すことが決まったんですよ。

恵比寿新聞
タイミングとハートですよね~。大事だな~。

河邉社長
毎日駐在する日本人が押し寄せて並ぶようなお店になったんですよ。青島では「日本食なら玉海力だよ」的なことになり。でもね。そんないい日も長く続かなくて。日中の関係が悪化して日本人駐在員が一気に日本に帰って来るようになったんですよ。売上もがた落ちで。それからちょっと考え方を変えて、現地人と日本人半分半分を相手にした商戦に変えていこうということになって。現在プノンペンでは現地人の好み100%のお店のやり方で営業していますね。日本語表記すらありませんから^^青島は去年にお店を閉めて現在は上海が7年目。今年にもう一店舗上海に増える予定です。

恵比寿新聞
今では日本の飲食店が海外進出ってよくある話だけど、当時は結構すごいことですよね。

河邉社長
いろいろやった結果、今までは「忠実に日本の味」を伝えようとしていましたが、今は街の人たちの口に合わせた味にも変えています。

恵比寿新聞
でもそんな躍進も「広尾本店」があったからこそですもんね。なんだか故郷がなくなったようなそんな気すらします。。悲しい。。今回は本当に貴重なお話をありがとうございました。

河邉社長
9月29日まで「玉海力広尾本店」OPENしておりますのでぜひお越しください。

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取材を終えて

2005年世の中に広がった「耐震偽造問題」

芋づる式に各社の耐震偽造・構造計算書偽造が発覚。

建物の耐震構造に対してチェックが厳格化。

そして2011年に発生した「東日本大震災」。

建物の耐震構造・耐久性に注目が集まりました。

2014年に「建築基準法の改正」が行われ過去

建築した建物の老朽化に伴う建て替えが一気に加速。

その渦中に今回の「広尾」も入っていた。

地震大国「日本」の性なのでしょうか。。

比較的地震の少ないヨーロッパなどは

古い建物をリノベーションして大事にそして

新しく使用している事例もありますが

日本は「地震大国」。

そうとは行かない現状もあるんだなと

今回の取材を通じて痛感しました。

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そして今回の「立退き問題」

老朽化に伴う開発という事実はあれども

他人の諸事情で計画していた流れが

なくなり突如不利益を被る事業主が

いるという事は忘れてはならない

事案だと思います。大きな開発ですが

「小さな声」を知ることも大切。

これから沢山こういう事が起こりそう。

そうなる前に何かできることは無いのかな?

何もできないのかな・・・・・

とにもかくにも21年続けてきた街のちゃんこ屋

「玉海力本店」は9月29日で閉店します。

閉まる前にぜひ。

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玉海力 広尾本店
東京都渋谷区広尾5-4-9
03-3473-0407

平日 17:30~23:15LO 
土日祝 17:30~22:45LO

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